LANにおけるループ構成を回避するための通信プロトコルであるスパニングツリーの状態遷移を詳しくみていきたいと思います。
スパニングツリーでは下記の流れで各ポートの役割を決めていきます。
1.ルートブリッジを決定
2.ルートポートを決定
3.代表ポートを決定
4.ルートポートにも代表ポートにもならなかったポートをブロッキングポートへ決定
これを決定するために各スイッチはブリッジの情報が入ったBPDUというフレームを送りあいます。
このBPDUに含まれる情報を比較することでポートの役割を判定していきます。
比較対象とその優先順位は下記の通りです。
A.最小ルートブリッジIDを選択
B.最小ルートパスコストを選択
C.最小送信元ブリッジIDを選択
D.最小ポートIDを選択
では、下記のような接続の時を詳しく見てみます。
1.ルートブリッジを決定
まずSwitchAとSwitchBは互いに自身がルートブリッジとしたBPDUを送りあいます。
F2/0、F2/1の両方のリンクから送出されるので下記のようになります。
これを受け取ったスイッチは判定のプロセスに入り、優先順位が最も高い「A.最小ルートブリッジIDを選択」を見ます。見ると、ブリッジIDを構成するプライオリティは両方ともデフォルトなので同じですが、MACアドレスがSwitchAの方が小さいです。これによりSwitchAがルートブリッジと判断されます。
この時点でSwitchBは自らBPDUを生成することをやめ、ルートブリッジから送出されてくるBPDUの一部を書き換え(コストと送信元ブリッジ)受信したインターフェース以外に転送し始めます。
2.ルートポートを決定
次にスイッチからルートブリッジまで最短で行けるポートであるルートポートを決定するプロセスに入ります。
ルートブリッジの両リンクから送られてくるBPDUを見てみます。
判定のプロセスに入ります。AとB、Cまでが同じなのでスキップします。そこで「D.最小ポートIDを選択」にゆだねられます。これを比較するとポートIDを構成するポートプライオリティはデフォルトの128と同じですが、ポート番号部分が異なります。よって最小のBPDUを受け取っているSwitchBのF2/0がルートポートになります。
3.代表ポートを決定
次に代表ポートの決定です。セグメントからルートブリッジに一番近いポートを選択するわけですが、ここではF2/1のセグメントを見てみます。
SwitchAから送出されるBPDUとSwitchBから送出されるであろうBPDUを比較します。
SwitchAの方は以前と変わりません。
SwitchBは、ルートポートであるF2/0から受け取ったBPDUに自身のパスコストである19(100Mビット/秒のデフォルト値)を加え、且つ送信元ブリッジIDを自身の物に書き換えたBPDUを送るはずです。
ここで判定のプロセスに入ります。Aは同じですので「B.最小ルートパスコストを選択」を見ます。
パスコストはSwitchAが0に対しSwitchBは19です。つまりこのセグメントではSwitchAのF2/1がルートブリッジに一番近いと判断され代表ポートになります。
4.ブロッキングポートを決定
SwithcBのF2/1はブロッキングポートへ遷移します。
では各スイッチでスパニングツリーの状態を確認します。
[SwitchA]
SwitchA#sh span brief
VLAN1
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32768
Address c201.1a50.0000
This bridge is the root
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32768
Address c201.1a50.0000
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 300
Interface Designated
Name Port ID Prio Cost Sts Cost Bridge ID Port ID
-------------------- ------- ---- ----- --- ----- -------------------- -------
FastEthernet2/0 128.81 128 19 FWD 0 32768 c201.1a50.0000 128.81
FastEthernet2/1 128.82 128 19 FWD 0 32768 c201.1a50.0000 128.82
[SwitchB]
SwitchB#sh span bri
VLAN1
Spanning tree enabled protocol ieee
Root ID Priority 32768
Address c201.1a50.0000
Cost 19
Port 81 (FastEthernet2/0)
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Bridge ID Priority 32768
Address c202.1700.0000
Hello Time 2 sec Max Age 20 sec Forward Delay 15 sec
Aging Time 300
Interface Designated
Name Port ID Prio Cost Sts Cost Bridge ID Port ID
-------------------- ------- ---- ----- --- ----- -------------------- -------
FastEthernet2/0 128.81 128 19 FWD 0 32768 c201.1a50.0000 128.81
FastEthernet2/1 128.82 128 19 BLK 0 32768 c201.1a50.0000 128.82
では今回はここまでです。